東洋医学による頭痛改善法
ひどい頭痛に悩まされている、日ごろから頭痛薬を持ち歩いているという方が少なくありません。
本日は、東洋医学の観点から頭痛に対処する方法をご紹介します。
【動画解説】東洋医学による頭痛改善法
頭痛という慢性疾患に対処できるのは東洋医学
頭痛で悩んでいる人は、病院でMRIなどを撮り、判明した以上を取り除けば解決すると考えがちです。しかし、病院の頭痛外来に行っても、頭痛の本当の原因がわかるケースはごく少数。原因が判明しないまま、痛み止めを処方されるのが大半といって間違いありません。
西洋医学を評して「木を見て森を見ない西洋医学」と言うのは、主訴となる部分は診るけれど、その他の症状については他の科に任せるから。頭痛に関しても、それは同じです。しかし、身体は全身つながっているもの。
「森を見て木を直す」東洋医学のように、身体全体を見て、一つひとつの症状を治していかなければ、慢性的症状が改善することはありません。ひどい片頭痛を本当に改善しようと思うなら、東洋医学専門の治療院で身体全体を見ることが大切です。
頭痛の原因は「瘀血」と「水毒」
東洋医学では、頭痛の原因は、「瘀血(おけつ)」と「水毒」にあると考えます。
瘀血(おけつ)
「瘀血」は、血液の滞りや血液の汚れがある状態のこと。血液が滞ったり、汚れがあると、東洋医学でいう「不通則痛(通らざればすなわち痛みが出る)」の状態に陥り、血の循環が悪くなって痛みが出ます。腰痛や肩こり、冷え性、巻き爪などの症状が出るのは、血の巡りが悪いから。頭痛の症状が出るのも、頭部にしっかり血が循環しないからです。
水毒(すいどく)
もうひとつのキーワードである「水毒」は、水の代謝が滞ったり外溢した状態を指します。身体に余分な水分が溜まることで、呼吸器や消化器、泌尿器や皮膚などにさまざまな症状が出てきます。
台風が接近する際の低気圧などによって引き起こされる頭痛も、「水毒」によるものと考えられます。
「瘀血」と「水毒」に効くツボ
「瘀血」に効果があるツボとして知られているのは、「三陰交」です。これは、生理不順や生理痛といった婦人科系の症状を軽減することでも有名なツボで、腰痛や肩こりにも大きな効果があります。頭痛もその延長線上にあるため、症状改善が期待できるのです。「三陰交」の他に「大巨(だいこ)」というツボもおすすめですが、自分でお灸するのには少し難しい位置にあるため、まず「三陰交」をお試しください。
低気圧が近づくことで頭痛の症状が出る「水毒」にお悩みの場合は、「水分」「水道」「三陰交」のツボがおすすめです。「水分」「水道」は「大巨」と同じくお腹にあるツボですが、自分でお灸しづらいため、「水毒」対策としても「三陰交」から始めてみましょう。
「瘀血」と「水毒」に効く漢方
「瘀血」に効く漢方としておすすめなのが空瘀血剤として知られる次の4つです。
- 「桃核承気湯」
- 「加味逍遥散」
- 「当帰芍薬散」
- 「桂枝茯苓丸」
桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)
生理痛がひどい、便秘がちでイライラしがちという瘀血体質の人にはまず「桃核承気湯」がおすすめです。便秘がちな方は、栓を抜かずにいるお風呂のようなもの。汚れが蓄積してしまって循環しづらくなったり、汚れが循環してしまうため、頭痛や腰痛、睡眠障害、うつ病、落ち込みといった症状が引き起こされます。
「桃核承気湯」には血の流れをよくする効果があり、こうした症状の改善が期待できますが、ひとつ注意していただきたいのは、「実証向け」の漢方であるという点です。これは、身体が充実していて、がっしりした方向けの漢方だということ。身体が弱い方には少し不向きです。身体が弱い、体力がさほどないという方は、規定の半量を飲む、食後に飲むなどの工夫が必要です。
加味逍遥散(カミショウヨウサン)
PMSや気分障害がある方に適しているのが、「加味逍遥散」です。更年期障害に効く漢方の代表格でもあり、「産婦人科の三大漢方薬」として知られています。頭痛だけでなく、月経異常や不定愁訴など幅広い症状に広く用いられるもので、神経の昂りや気鬱などにも効果があります。
桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)
「桂枝茯苓丸」は、瘀血をさばいたり、瘀血をきれいにするという点で非常に優れた漢方です。「桃核承気湯」と同じく「実証向け」の漢方ですのでご注意ください。「桃核承気湯」との使い分けとしては、便秘がある場合は「桃核承気湯」を、便秘がない場合は「桂枝茯苓丸」を選ばれるのがおすすめです。
当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)
「瘀血」と「水毒」の両方に使える漢方が「当帰芍薬散」です。水をさばく「利水作用」もあり、「瘀血」を取りながら「水毒」にもしっかり適用しており、虚症の方にも適しています。「瘀血」「水毒」の両面で頭痛を引き起こしている方はぜひお試しください。
五苓散(ゴレイサン)
「水毒」が原因で片頭痛が起こっている場合は、「五苓散」がおすすめです。身体に溜まった水分のはけをよくしてくれる作用があり、水を整えてくれます。台風による頭痛が「五苓散」で改善したケースが多数です。
「瘀血」と「水毒」を改善できる食生活
「瘀血」による症状を改善したいという場合、肉類を過剰に摂取するのはあまりよくありません。東洋医学では、肉類が身体を汚すと考えます。これは、乳製品や白砂糖、加工食品、添加物なども同様で、「瘀血」を作る原因になってしまいます。
かといって、肉類を全て避けるべきだというわけではありません。少量であれば問題はありませんし、肉類の中でも「瘀血」の原因になりにくい順序を覚えて、優先順位をつけるようにしましょう。いちばんおすすめなのは鶏肉で、次が豚肉、最後に牛肉です。
低気圧などが原因で頭が痛くなる「水毒」は、身体の中が水浸しになっている状態です。そういった方は、ビールを控える必要がありますし、水分の取りすぎも禁物です。身体のために水分をたくさん取ったほうがよいと思っている人がいるかもしれませんが、身体は水の塊です。1日あたり1.5リットルの水をお小水や唾液、発汗、便などを通して排出していますが、それでも排出しきれるものではありません。
水分を取りすぎると腎臓に負担をかけることにもなってしまうため、喉が乾いたときに飲めば十分だとご認識ください。
「瘀血」を改善するための睡眠のとり方
東洋医学では、24時間の2時間ずつを六臓六腑、計12個の内臓に配当して考えます。肝臓の時間とされるのは、午前1時から3時。この時間に、血液を浄化し、全身にくまなく血液をいきわたらせるという肝臓の働きがもっとも活発になります。この時間に起きていると、肝臓がしっかり働かず、血液がどんどん汚れてしまうことに。血液が停滞してしまうことにもつながります。
肝臓をしっかり働かせて、血液の汚れを取り除くためにも、午前1時から3時にかけてはちゃんと睡眠をとることが大切です。
「水毒」の症状を悪化させないアルコールとの付き合い方
「水毒」の症状を改善するためには、水分の取り過ぎが厳禁。さらに、身体を冷やす作用があるビールも避けましょう。
アルコールを取るなら、焼酎がおすすめです。中でも、根菜類である芋を原料とした芋焼酎がよいでしょう。日本酒好きの方なら、純米酒を選ぶようにしましょう。純米吟醸は、米を削って作るため、身体を冷やす作用が強まります。また、アルコールを加えて作る醸造酒は、瘀血体質にもつながってしまいます。なるべく人工的に手を加えない方法で作られたお酒を選び、上手に付き合っていきましょう。