鍼灸の施術中にお腹が鳴る理由とは?

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お腹が鳴る

鍼灸の施術をしていると、よくお客様のお腹が「グルグル~」と鳴ることがあります。先日も施術中にお腹が鳴ったお客様から「すみません、お腹が鳴ってしまいました……」と申し訳なさそうにお声がけいただきました。

でも実は鍼灸師にとって、お客様のお腹が鳴る音が聞けるのは喜ばしいことなんです。そこで本記事では、「なぜ鍼灸中にお腹が鳴ってしまうのか」、その理由を東洋医学の視点から解説していきます。

鍼灸をするとお腹が鳴る理由

鍼灸施術

鍼灸師としては、お客様が施術中にお腹が鳴ってしまっても「気にしなくて大丈夫ですよ~」とお伝えしています。これはお客様がリラックスされている証拠なので、鍼灸師は「身体の喜びの声」と呼んでいます。では、なぜリラックスするとお腹が鳴るのでしょうか。その理由は内臓自律神経の繋がりにあります。

通常、わたしたちの身体は心身が緊張状態にあると、自律神経のうちの「交感神経」が活発に働きます。交感神経は「闘いの神経」と呼ばれ、心と身体を興奮状態にさせるのが特徴です。身体を活発に働かせるために筋肉にどんどん血流を送り込み、心拍数を上げていきます。

一方で、その代わりに活発にならなくなるものがあります。それは「内臓」です。内臓の働きを止めて、その分のエネルギーと血流を他に回しています。そのため、緊張状態が続くと、内臓の働きは止まってしまうのです。

内臓の冷え

もし、闘いが何時間、何日も続いたら身体はどうなってしまうでしょうか。交感神経が働き続けることになるので、心身は疲れ果ててしまいます。いくら筋肉に血液を送りつづけたとしても、筋肉も長時間緊張して力が入ったままになっているため、そのうちカチコチに固まってしまいます。

さらに、血管も圧迫されてしまうため、血流を送り込めなくなるという悪循環です。交感神経が働き続けて内臓の働きが悪いままであれば食欲もなくなってしまい、無理して食事をすると胃が痛くなってしまいます。ストレスで胃が悪くなることはこのようなことが原因であると考えられます。つまり、身体が頑張り続けられるのには限度があるということです。

鍼灸の役割とは

鍼灸

こうした自律神経の乱れを鍼灸で調整し、身体の循環を良くすることで胃腸は再び動き出します。長い緊張状態を経てヘトヘトに疲れた身体は、胃腸の動きもすっかり止まってしまっている状態です。この状態の場合、交感神経が緊張しすぎで自分の力では戻せなくなってしまっています。

そこで身体の疲れている部分や痛み、辛さの出ている箇所、循環が悪くなっている部分などに、身体全体にとって心地よい刺激を与えてほぐすのが鍼灸の役割です。鍼灸によって疲れている部分などが緩むことで、身体がリラックスする力が大きく働きます。

そこで活発になるのが、鎮静作用の役割がある「副交感神経」です。副交感神経が優位に働くと筋肉が緩み、心拍数が下がります。その後、血流が内臓に送られ、働きが活発になる仕組みです。すると、身体全体がリラックスするので食欲が湧いたり眠くなったりして、お腹も「グルグル」と鳴り出します。

つまり、お腹が鳴ってしまうのは身体が喜んでいる状態、至福のリラックスサインなのです。ですので、もしこれを読んでいるあなたも鍼灸の施術中にお腹が鳴ったら、「これは効いているな、身体が喜んでいるな」と思ってくださいね。

自宅でできる自律神経のセルフケア

入浴

胃腸を含め、身体の調子が悪いと感じるときは、自律神経が乱れている可能性があります。ここでは、そんなときオススメな、ご自宅でできる自律神経のセルフケア法をご紹介します。

お風呂の温度は何度がベスト?

身体がだるいときは、体温から4度以内のぬるめの入浴がオススメです。副交感神経が優位になり、リラックスした質のいい睡眠が得られます。温度が高すぎると交感神経が活発になり、心身ともに興奮状態になってしまいますので注意が必要です。

ストレスが溜まったら深い呼吸

深呼吸

イライラ、不安などが募ってストレスが溜まると交感神経が優位になります。こういうときは、腹式呼吸により吸った息をしっかり臍の下までおろせるようにすると、身体を回復モードにさせる副交感神経が優位になって心身が整います。

夜寝る前にこの腹式呼吸を行うと、スイッチのオン・オフの切り替えがスムーズにいくので、睡眠の質も高まり効果的です。呼吸は鼻から吸って、吸うときの二倍かけて鼻から吐いてみましょう。吐くことを意識するとリラックスのスイッチが入りやすくなりますよ。

まとめ

鍼灸中にお腹が鳴るということは、身体がリラックスしている証拠です。鍼灸やセルフケアで自律神経を整えて、お腹がグーっと鳴るくらいリラックスしましょう。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

吉澤先生