緊張をほぐし全身の疲れをとる「体と心の呼吸法」

- update更新日 : 2022年08月25日
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呼吸法

頭が重だるい、肩や首が痛いなど、原因不明の頭痛や首周りの痛みを誰しも一度は経験したことがあるでしょう。原因不明となると病院でも対処が難しく、お困りのことと思います。そんなお悩みは、東洋医学でまるごと解決することが可能です。今回は現役鍼灸師が、ケガや事故でないのに痛む頭や首周りの痛みの原因と対処法について詳しく解説していきます。

東洋医学から見る「気」と痛みの関係

人体

リモートワークなどの機会が増え、眼精疲労などからくる頭痛や首の痛み、肩こりに悩まされる方も少なくありません。このように、ケガや事故などの傷害歴がないのにもかかわらず、頭や首周りに疼痛がある場合、東洋医学的には「気」の巡りに問題があると考えます。

例えば気が滞っている状態の気滞や、エネルギーが不足している気虚もそのひとつです。

東洋医学的な所見を立てるには、その他の症状にも考慮しながら複合的に見ていく必要があります。ただし、これらの症状は身体を流れる気の循環障害であることがほとんどです。この原因を踏まえ、改めて部位別の症状と対処法を東洋医学の視点から見ていきましょう。

東洋医学的な症状別のメカニズムと対処法を解説

鍼灸

頭痛

頭痛を訴えられる方の多くは、こめかみのあたりや後頭部、特に首との連結部に痛みを感じて来店されます。また、前頭部や頭全体が痛む場合や、低気圧をはじめとする悪天候に左右されるケースもあるようです。

これらは全て鍼灸施術の適応範囲内であり、薬が効かない頭痛においても東洋医学的な観点で説明づけることができます。気の巡りが原因の場合は、ツボにアプローチをして巡りを整えると、施術中に「楽になった」と感じる方も多くいらっしゃいます。

首こり

首の痛みやコリは、目の疲れと密接に関係していることが多いです。眼球運動と首の後ろの筋肉が関連していることは、だれでも簡単な方法で実感することができます。

まず仰向けになって横になり、床と頭の間に手を置いて頭と首の境目あたりに指が触れるようにします。目は開けていても閉じていても構いませんので、そのままの状態で目を上下左右に動かしてみてください。そうすると首の後ろの指で触れている筋肉が、眼球の動きに合わせて収縮をくり返す様子が感じられるでしょう。この体験から、目で何かを追うだけで首の後ろの筋肉が疲労することがおわかりいただけたかと思います。

スマホやパソコンなど目から情報を得る機会が多い昨今、画面を凝視する作業の合間には目の周りのツボを押すなどして小休止も意識してくださいね。また、首は重い頭を支えているので首を回す運動をしたり目にホットアイマスクを乗せたりと、循環を良くする方法も大変有効です。

肩こり

パソコンやスマホでの作業が続くと、腕の疲労からの地続きで首肩こりが起こる場合があります。キーボードをたたくときは指が自然と落ちますが、その合間には必ず指や手首を重力に逆らって上げる運動(背屈運動)がくり返し起こります。当たり前のことなのですが、この点が非常に重要です。

というのも、この背屈運動にかかわる筋肉は比較的細いので疲労しやすいという特徴があります。つまり、指を下ろすときには重力の助けもあってそこまで強い力は必要ありませんが、反対に指を上げるときは、細く疲れやすい筋肉が重力に逆らって、懸命に背屈運動をくり返すことになるのです。

これは東洋医学の視点から見ると、経絡が大きく関連しています。経絡とは全身に張り巡らされている気血水の通り道のことをいい、東洋医学では経絡のメカニズムを利用してカウンセリングや施術を行うのが特徴です。

先にお伝えした疲労しやすい腕の筋肉には、経絡に当てはめると大腸経三焦経小腸経といった手の陽経が走っており、多くの方が首こりや肩こりを訴える部分につながっています。そういった方の場合、痛みやコリを訴える首や肩の部分だけでなく、手首や肘回りのツボを使った遠隔的な施術を行うと効果的です。

悪い姿勢

こうした疼痛が起き始めると、痛みをかばって身体を動かすため姿勢が変化し、骨盤の傾き具合や背骨の弯曲がずれはじめて全身に影響を及ぼします。そうなると主に心臓や肺などの重要な臓器を守るためにある胸骨や肋骨、胸椎から成る胸郭が丸まってしまい、深く息を吸えなくなってしまうことから上胸部だけでの浅い呼吸になってしまうので注意が必要です。

浅い呼吸が続くと呼吸補助筋といった、自然な呼吸時には使わない首回りの筋肉が疲労して痛みが出たり、不安感が強くなったり、集中力が落ちて不眠も起こりやすくなります。これはまさに、身体の細胞一つひとつに綺麗な空気や血液が行き渡らず、老廃物を回収しきれなくなる「気」の循環障害が起こっている状態です。体内の酸素と二酸化炭素のバランスが乱れれば血液の組成も悪くなるため、痛覚の感覚受容の亢進(痛みを感じやすくなること)が起こります。そうなると痛みを緩和させるために、薬や湿布などに頼ることになってしまいます。

ですがこれらはあくまで対症療法であって、根本的解決には至りません。はじめは薬を飲めば痛みが緩和されるかもしれませんが、次第に効かなくなってしまうのです。薬に頼れないとなると、一体どうすればいいのかと不安に思われるかもしれません。でも安心してください、東洋医学では薬を使わずとも身体のバランスを整える方法があります。

気の巡りは正しい呼吸で改善!

腹式呼吸

先にお伝えしたように、痛みを感じやすくなるのは気の循環障害が原因です。実は気の巡りは、日常生活において正しい呼吸をすることにより改善することができます。改善のカギとなるのは、腹式呼吸です。

腹式呼吸により吸った息をしっかり臍の下までおろせるようになると、身体を回復モードにさせる自律神経である副交感神経が優位になるため心身のバランスが整います。日中は交感神経を優位に働かせて活動するため、この切り替えが非常に重要です。そのため、腹式呼吸は夜寝る前に行うと特に効果が高いといわれています。

こうしたスイッチのオンオフがうまくいかなくなると、睡眠が浅くなったり朝起きられなくなったりといった自律神経失調症という症状が起こります。つまり、ストレスがたまったときこそ深い呼吸が重要なのです。呼吸は自分で意識的に整えることが大切なので、簡単な方法をご紹介します。

4・7・8呼吸法

セルフケア呼吸法

  1. 4拍かけて鼻から息を吸う
  2. 7拍かけて息を止める(おへその下に空気が下りていくことをイメージしましょう)
  3. 8拍かけて口から細く息を吐き切る

拍の数え方はご自身のリズムでいいので、秒数にこだわる必要はありません。吐き切る息については細く長くを意識し、長ければ長いほど良い方向に作用します。万が一、動悸やめまい、過呼吸の兆候が見られたらすぐに中断してください。まずは大きな深呼吸からトライしてみましょう。

まとめ

ヨガ

呼吸を整えると、呼吸時の主な筋肉のひとつである横隔膜がしっかり使えるようになります。また、腹式呼吸が自然にできるようになると、姿勢も良くなるので腰痛予防にも効果的です。体の枠組みである筋骨格の歪みがあるままだと、たちまち気の循環障害に陥り、不調が引き起こされます。まずは背筋を伸ばして胸を張り、「私は体調が悪いです」というイメージを姿勢から払拭しましょう。

心身ともに健康でいるためには、姿勢身体の内側の循環のどちらも改善する必要があります。鍼灸はそのどちらにも効果のある施術法です。病院やどこの治療院でも改善されなかった症状こそ、鍼灸施術の出番となります。

今回は呼吸法からのアプローチをご紹介しましたが、お悩みの症状を伝統ある東洋医学の考え方で改善されるきっかけになれれば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

吉澤先生